2021年28冊目の読書レポートは『ニュースの未来』(著 石戸 諭/光文社新書/初版2021年8月30日)。遅ればせながら、手に取りました。
スマホを開けば、いつでも、どこでも無料でニュースが読めるようになり、電車で新聞を読む人は今や“絶滅危惧種”。新聞の購読者が減るのも無理ありません。
本書は、新聞記者からネットメディアの編集者を経て、現在はノンフィクションライターとして活躍中の著者による「メディア(ニュース)論」。
インターネット時代の「良いニュース」とは何かを考え、自身の歩んできた道を振り返りながら、これからのニュースのあり方について自らの思いを綴っています。
著者の考える、インターネット時代の「良いニュース」とは、①事実に基づき②社会的なイシュー(論点、争点)について③読んだ人に新しい気づきを与え ④かつ読まれるもの。
そして「良いニュース」には、「謎」、「驚き」、「批評」、「個性」、「思考」の五つの要素が含まれているとしています。
しかし、新聞社には他のメディアが到底及ばない力がありながら、記事を書くには様々な制約が存在。
一方、広告収入が頼りのネットメディアは、PV数がすべてであり、クオリティーより速さが優先され、人材も不足。
「良いニュース」を発信するのは、簡単ではなさそうで、それどころか、インターネットの世界では、人々の感情を刺激するだけのニュースやフェイクニュースが横行。
最近では、読者のメディアリテラシー(=あいまい情報に耐える力)の重要性が言われる有様です。
ところが印象的だったのは、著者が、ニュースの発信者にこそ“あいまい情報に耐える力”が必要だと語っていること。
現実の社会は、答えの出ない複雑な問題ばかりであり、答えのない時間に耐えた後に出すニュースに、「良いニュース」の糸口があることがその理由です。
発信者には難題かもしれませんが、「良いニュース」は、PV稼ぎだけが目的のニュースやフェイクニュースの防波堤になるはず。
「良いニュース」が少しでも増え、「良いニュース」への認識が高まり、ニュースの世界に変化が起きてほしいものです。
もっとも、ニュースの読者が、ニュースサイトに流れてくる、自分の好みの記事を拾い読みするばかりでは、「良いニュース」は続かないでしょう。
発信者だけでなく、ニュースの読者も、「良いニュース」の担い手であることを、忘れてはならないと思います。