昨日、NHK交響楽団「第1938回定期公演(Aプログラム)」があり、東京芸術劇場に足を運びました。
指揮は沼尻竜典さん。オペラの指揮で定評のある沼尻さんですが、N響の定期で振るのは初めてということで、楽しみにしていました。
プログラムの前半は、N響首席クラリネット奏者 伊藤 圭さんのクラリネットで、モーツァルトの『クラリネット協奏曲』。
N響のメンバーということもあってか、伊藤さんの演奏は大袈裟なパフォーマンスもなく、“端正” という言葉がぴったり。
それでいて、「バセット・クラリネット」の特色を生かした音色は情感豊かで、聴く者を引きつけます。
第2楽章は、ゆっくり流れる時間の中で、心が洗われるよう。第3楽章は、軽やかなリズム(パッセージ)とともに、伊藤さんのテクニックを堪能しました。
それにしても、楽団員とはいえ、協奏曲のソロを演奏したあとオケでも吹いていたのは、さすがと言うしかありません。
後半は、マーラーの『交響曲第1番 「巨人」』。
マーラーの代表作のひとつですが、私もお気に入りで、CDでもよく聴きます。
昨日の沼尻さんの指揮は、気持ちがこもっていることが一目瞭然で、オケもそれに応える熱演。
特に第4楽章は圧巻で、弦・管・打楽器が一体となったダイナミックな演奏は強く心に響き、演奏が終わってしまうのが、残念な気さえしました。
ところで、昨日の演奏で改めて思い知ったのが、弦の重み。
劇的な作品の場合、ともすると管楽器の華やかさに目が奪われがちですが、演奏が進むにつれ、管楽器が活躍できるのも、弦楽器あってこそだとの思いが募ってきました。
第三楽章冒頭のコントラバスのソロは、今も心の中で響いています。