えむと、メモランダム

読んだ本と出来事あれこれ

『すばらしい人体 あなたの体をめぐる知的冒険』を読みました。

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2021年30冊目の読書レポートは『すばらしい人体 あなたの体をめぐる知的冒険』(著 山本健人/ダイヤモンド社/ブックデザイン 鈴木千佳子/初版2021年8月31日)。

山本先生の本は、一昨年読んだ『医者が教える正しい病院のかかり方』(幻冬舎新書)以来です。

先生は現役の外科医。「外科医けいゆう」の名前で運営する医療情報サイト『外科医の視点』は人気で、Twitterのフォロワー(私もその一人)が多いことでも知られています。

本書は、人体と医学にまつわる様々な知見を、一般の人にも楽しく教えてくれる一冊。

第1章は人体の優れたしくみについて、第2章は病気になる理由について解説。

続く第3章では、医学を進歩させた偉人達の功績を振り返り、第4章で身近な健康知識を紹介。

そして第5章で、医療機器の進歩について解説。全部で50以上の話が登場します。

普段、“健康本”は読むことがあっても、医学の本に触れることなどまずありません。

それだけに、先生の話は新鮮で、しかもわかりやすく、知的好奇心が大いに刺激されました。

中でも面白かったのは、第1章の人体のしくみ。

日頃、頭や手足の重さを感じないのは、肩や背中、臀部の大きな筋肉で「部品」を支えているから。

人体には「遊び」があり、臓器にも外観と同様に、健康という目的を果たせる範囲内で個性がある。

肛門は、高機能な筋肉と極めて繊細なセンサーで私たちの日常生活を支える、替えのきかない優れた臓器。

何も考えずにまっすぐ歩いたり、コップに入った水を飲んだり、服を着替えたりできるのは、「深部感覚」のおかげ…。

“目から鱗”の連続でしたが、「何も考えずに楽な姿勢をとれることは、健康な人が持つありがたい機能」という言葉は思いがけないもの。健康の意味を考えさせられ、今も頭から離れません。

一方、医学者の地道な努力や思わぬ発見で、命を救う薬が生まれ、科学技術の進歩によって画期的な医療機器が開発される。その恩恵を受けて、私たちは今生きていることを、本書で改めて思い知りました。

先生は、「これまでの医学は、人類が力を合わせ、共通の敵と戦う時代だったけど、これからは個人が固有の武器を手にし、それぞれの敵と戦う時代が訪れる。」

「百年後の医学は、今から想像もつかない形で人類を病気から救っているに違いない」と語っています。

今、AIが様々な分野で変革をもたらしていますが、先生も言及しているように、医学の世界も例外ではないでしょう。百年待たずとも、早晩、先生の言葉を実感できる日が訪れそうな気がします。

ところで、本書には、人体の全身図(骨格と頭部・内臓)がジャバラ折りでついています。珍しい付録で、思わず見入ってしまいました。

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