えむと、メモランダム

読み散らした本と出来事あれこれ

『ごみ収集とまちづくり 清掃の現場から考える地方自治』を読みました。

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2021年31冊目の読書レポートは『ごみ収集とまちづくり 清掃の現場から考える地方自治』(著 藤井誠一郎/朝日選書/初版2021年8月25日)。書店で目にして手にとりました。

著者は大学の准教授で、地方自治の専門家ですが、3年前に、著者の前著『ごみ収集という仕事 清掃車に乗って考えた地方自治』(コモンズ)を読みました。

現場主義のもと、著者が9カ月間に渡りごみ収集に従事したことに驚き、懸命にごみ収集にあたる職員の姿に頭が下がり、行政サービスの民間委託の問題について考えさせられ、読み終えたあとの強い印象は、今でも残っています。

本書は、前著からさらに踏み込んで、清掃事業の奥深さや、抱える課題を示して、これからのあり方を考えるもの。

まず、昨年11月から今年3月まで行った、東京都北区での清掃体験をもとに、大都市の清掃事業の概要を明らかにし、ごみ収集現場の実情を報告。

続いて、行政改革と清掃事業の関係や、コロナ禍での清掃行政について言及。

さらに、清掃差別克服の道のりを振り返り、清掃現場での女性の活躍と、“ごみ無法地帯”新宿二丁目で起きた、官民協働による美化への取り組みを紹介。

最後に産業廃棄物業界の概要を説明し、産廃業者のDX(デジタルトランスフォーメーション)推進について、著者の考えが述べられています。

前著より広い観点からの話は興味深く、改めて“何も知らないこと”に気づかされましたが、本書でもまず心に残ったのは、清掃職員の方々の高い職業意識と身を粉にして働く姿でした。

ごみ袋の結び目に指をひっかけ、可能な限りのごみを路地裏から引っ張りだす。

その“引っ張り出し”のために指が曲がってしまう。

年始の老人ホームで、異様な臭いが漂うなか1週間分のオムツ(70ℓの袋で100個以上)を収集する。

コロナが猛威を振るなかでも、感染リスクを承知のうえで収集業務を全うする…。

著者は、「身を挺した清掃関係者の仕事のおかげで衛生的な環境が維持されていることを忘れてはならない。」と語っていますが、その言葉を噛み締めないわけにはいきません。

また、ごみが溢れかえっていた新宿二丁目が、住民参加や協働による美化活動によって徐々に改善されていく様子も印象深いもの。

地元の一人の経営者の思いが、ゲイバーのママたちにも伝わり、一緒になって活動に取り組む姿には目を見張りました。

「働いている街だから綺麗にしたい」というママたちの思いは、新宿二丁目に限らず、清掃事業やごみ問題を他人事にしないための“手がかり”になるのだろうと思います。

コロナによって清掃従業者は「エッセンシャルワーカー」として注目を集め、ごみ袋には感謝のメッセージが貼られたこともあったそうです。

ただ著者は、それが一時的なブームで終わらないことを期待しつつ、「排出者がごみをしっかり分別し、ごみ袋をきちんと結び、所定の箇所に収集しやすく並べて置く方が、何よりも清掃従業者に謝意を伝える手段になる」と語っています。

ごみ収集を体験した著者ならではの言葉ですが、前著を読んでから、私もごみの出し方には気をつけるようになりました。

ごみ収集の実態や清掃職員の思いを知れば、きっとごみの出し方も変わり、清掃事業も他人事ではなくなるはず。

現場体験は無理だとしても、前著や本書に書かれていることがもっと知られてほしいと思わずにいられませんでした。