昨日、東京芸術劇場で歌劇『夕鶴』を鑑賞しました。
『夕鶴』を観たのは生まれて初めて。日本を代表するオペラと言われているので、とても楽しみにしていました。
キャストは、「つう」小林沙羅さん、「与ひょう」与儀巧さん、「運ず」寺田功治さん、「惣ど」三戸大久さん、子供たち役で世田谷ジュニア合唱団。
ほかに岡本優さんと工藤響子さんがダンスで出演しました。
今回の公演は、“新演出”と銘打たれたものですが、これまでどのような演出がされてきたのか、もちろん知りません。
それでも、民話が題材になっている作品だけに、始まるまでは日本的なイメージを頭の中で描いていました。
ところが、岡田利規さんの演出は想像を遥かに超えるもの。
舞台にはダイニングテーブルとデッキチェアが置かれ、「つう」はドレスをまとい、「与ひょう」はスーツ姿。
子供たちはお揃いのおしゃれな衣装に、顔の書かれたバルーンのようなものを持って登場。
機織り部屋にはネオンが輝き、舞台の上でシャボン玉が飛び、ダンサーが躍る…。
あまりの斬新さに目が奪われましたが、「つう」が壁を蹴破り、「与ひょう」のもとを決然と去って行ったのには、さすがに驚いてしまいました。
民話の世界とかけ離れた岡田さんの演出には、賛否があるかもしれません。
けれど、岡田さんが言うように、『夕鶴』が現代を生きる私たちの問題を描いているのだとしたら、舞台はノスタルジックである必要はなく、登場人物も個性的であっていいはず。
印象は確かに強烈でしたが、『夕鶴』の新しい描き方はまさに今を感じさせるもので、感心するしかありませんでした。
もっとも、舞台の演出は変わっても、音楽やセリフは変わりません。
「つう」の深い思いと、悲嘆を歌った小林さんの透き通ったアリアに心をうたれ、「与ひょう」の揺れ動く心情を捉えた与儀さんの歌声も印象に残りました。
休憩時間もいれて、2時間半くらいの公演でしたが、あっという間。
機会があれば、是非もう一度観たいものです。