2021年34冊目の読書レポートは『少女たちの戦争』(編 中央公論新社/初版2021年11月10日)。書店で目にして手に取りました。
もうすぐ、太平洋戦争が始まった12月8日です。今年は開戦から80年の節目の年ですが、今の時代、ピンと来ない人の方が多いでしょう。
本書は、太平洋戦争開戦時、まだ二十歳未満だった女性作家たちの、戦争にまつわるエッセイを選び、収録したもの。
瀬戸内寂聴、佐藤愛子、橋田壽賀子、杉本苑子、茨木のり子、石牟礼道子、田辺聖子、向田邦子、林京子、有吉佐和子…。
27人の名だたる書き手が、記憶に残る戦時下の日常の一コマや、戦争に対する思いを綴っています。
大半の著者にとって、開戦から終戦までの時期は多感な青春時代。本来なら、将来を夢見て勉学に励んだり、友人と楽しく語らったり、恋にあこがれたりと、忙しい日々を送っていたはずです。
ところが、多くの作品で描かれているのは、勉強もそこそこに勤労動員に駆り出され、空襲におびえ、食べるものに苦労し、とにかくがまんを強いられる毎日。
かけがえのない青春時代なのに、戦争によって翻弄される様子には、やるせなさを感じます。
どの作品も印象的でしたが、とりわけ心に残ったのは、津村節子さんの『めぐり来る八月』と新川和江さんの『にがく、酸い青春』に登場するエピソード。
どちらも、「自分たちが軍需工場で造った部品を搭載した特攻機や人間魚雷に乗って、若者たちが死んで行った」と、複雑な胸の内が明かされているのですが、決して癒されない心の傷を感じさせ、戦争の罪深さを思わずにいられませんでした。
茨木のり子さんは、『はたちが敗戦』で「暗雲はいちどきに拡がったのではなく、徐々に徐々に、しかし確実に拡がっていって、気がついたときには息苦しいまでの気圧と暗さとで覆いかぶさるようになっていたのである。」と語っています。
日本人にとっては、忘れてはならない、戒めの言葉に違いありません。