えむと、メモランダム

読み散らした本と出来事あれこれ

『写真はわからない 撮る・読む・伝える―「体験的」写真論』を読みました。

読後ノート2022年No.12は、『写真はわからない 撮る・読む・伝える―「体験的」写真論』(著者 小林紀晴/光文社新書/初版2022年4月30日)

写真には昔から興味があり、カメラも何台か持っています。ただ残念ながら「趣味」というほどには活躍していません。

本書は、写真家で、東京工芸大学の教授でもある小林紀晴氏の写真論。

写真の世界に入ってから、どんな思いで、どのように撮ってきたのか、小林氏がつぶさに語りながら、「いい写真とは何か」を考え、「写真の本質」を探っていきます。

写真論といっても決して難しいものではなく、様々な角度からの写真の話はどれも新鮮でしたが、興味をひかれたのは、やはり著者が撮ってきた「人物」、「風景」、「過去」にまつわるエピソード。

俳優・本田博太郎さんの鬼ごっこしながらの撮影。サッカーの宮本恒靖さんの「空気」の撮影。女優・鶴田真由さんをモデルにして撮った「いま、ここ」という瞬間。諏訪の御柱祭で撮影した「過去の人たち」。

印象的な作品を通して、自分の思いや意図を伝えるために考えていること、苦労しながら入念に準備する様子、さらには写真家が被写体の奥に見ているものを知って、今更ながらプロの凄さを実感しました。

また、「10人中10人に伝わる写真はつまらない。趣味も興味も思考も世代も違うすべての人に同じように伝わるわけがない」。

「何を撮ればいいのかを理解するのは当然のことだが、何を撮らなくていいかを理解していることは、最終形が見えているともいえる」。といった言葉も心に残るもの。

なかでも、「写真を撮る者」になるためには、写真より好きなものを持つことが必要だという指摘はまったく思いがけないもので、ハッとさせられました。

振り返ってみると、何か関心のある被写体があったわけでもなく、目についた風景や街並みを撮ることの繰り返し。

カメラが宝の持ち腐れになっている大きな理由は、私が「写真を撮る者」でないことにありそうです。

今は誰もがスマホを使って「いま、ここ」を撮る時代。
それだけに、まずは「写真を撮る者」になろう。そして、小林氏の言う「いい写真」(新鮮で、多くの人にとって未知のイメージで、新たな価値観の提示する写真)は無理だとしても、今でとは違う写真を撮ってみよう。

本書を読んでいるうちに、そんな気持ちが湧いてきました。

小林氏によれば、写真は人生と同様「わからないもの」。だからこそ、わかろうとすることを続けていくことに意味があり、そのためには「面白がる」ことが大切だと語っています。

シャッターを切ることがもっと面白くなれば、「写真が趣味」と言える日がやって来そうです。