えむと、メモランダム

読んだ本と出来事あれこれ

『百戦錬磨 セルリアンブルーのプロ経営者』を読みました

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(初版限定のステッカーと刊行記念のクリアファイルとともに)

2019年63冊目の読書レポートは、『百戦錬磨 セルリアンブルーのプロ経営者』(著 ハロルド・ジョージ・メイ/時事通信出版局 初版奥付2019年12月31日)。

著者が新日本プロレスリングの社長であることを知ったのは、NHKのバラエティ番組『サラメシ』に出演しているのを見て。その驚きがまだ残っているときに本書が目にとまり、手に取りました。

著者は、大学卒業後、ハイネケンジャパンに就職し、その後日本リーバーでブランド・マネージャーに。

そして、サンスターで執行役員、日本コカ・コーラで副社長、タカラトミーでは社長を務め、経営の手腕を振るってきた、いわゆるプロ経営者です。

本書は、著者がこれまでのキャリアを振り返りながら、「マーケティング」、「経営」、「組織と人」をテーマに、マネジメントについて語り、新日本プロレスへの思いを綴ったもの。

経営論というと、難しいイメージもありますが、様々なエピソードや具体例をもとにした話はシンプルで、かつ明快。実体験に裏打ちされているので説得力もあります。

特に、リプトンの木箱入り紅茶セットの話、成田空港でカプセルトイの自販機を並べた話、POP広告の話、海外からのお客様を“上生菓子”でもてなす話…。

“天職”と言うだけあって、マーケティングの話は実に面白く、着眼には感心するばかりでした。

経営の話で共感したのは、広報、法務、お客様相談室といった企業経営を下支えする部門を大切にする姿勢。

「契約書は会社の防波堤」だとして、その重要性を指摘。また「日本の企業はもっと法務部門を強化すべき」とも言及していて、私自身が、企業法務を担当しているだけに、「まさにその通り」と声をかけたくなります。

著者は、会社と社員の生活を守る責任があるからという理由で、契約書は一字一句しっかり読んでいるそうです。

多忙な日々のなかで、実際にそこまでやるのは、かなり難しいことでしょうが、少なくとも意識だけは、著者を見習ってほしいものだと思いました。

一方、組織や人材の話は、社員の立場でも参考になるものです。

コミュニケーション、特にポジティブな言葉の重要性やグロバール化が進む中で必要となる3つの国際的マインド―「イニシアティブが取れること」、「商品、仕事にパッションがあること」、「機転が利くこと」―などは、日本人として耳を傾けるべきものでしょう。

経営者にもいろいろなタイプがありますが、本書から受ける著者の印象は、偉ぶらず、アイデアとサービス精神にあふれ、気配り、目配りを怠らない人。

本書では、初版限定で読者プレゼントとしてステッカーが付いていて、私が買った商品には、刊行記念のクリアファイルまで付いていました。

「著者の気持ちがそこまでさせた」と言われたとしても、十分納得できます。

『定年消滅時代をどう生きるか』を読みました

定年消滅時代をどう生きるか (講談社現代新書)

2019年62冊目の読書レポートは、『定年消滅時代をどう生きるか』(著 中原圭介/講談社現代新書 初版2019年12月20日)。書店で目にして、手に取りました。

社会人になったのは1980年代。年功序列、終身雇用、企業内労働組合、新卒一括採用という日本型人事制度は、まだ色濃く残っていました。

当時、「入社したら、その会社で定年まで勤めあげる」というのはごく普通の考え方。途中で転職することや、定年後も働くことなど考えてもいなかったはずです。

その後時代とともに、日本型人事制度は変容してきましたが、日本経済の停滞と経済のグローバル化、また少子高齢化の影響で、雇用慣行はここに来て激変しようとしています。

本書は、経営アドバイザー・経済アナリストとして活動する著者が、この大変革期における働き方について考え、アドバイスをするもの。

変革が起きている背景、企業における採用・雇用形態の変化、これからの人材育成のあり方などを、グラフや図表も交えてわかりやすく解説しながら、人生を豊かにする働き方を示していきます。

著者は、70歳から75歳くらいまで働くのが当たり前になる時代では、ひとつの仕事・会社に従事する期間を15年から20年に区切って(30代後半を第一の定年、50代後半を第二の定年とします)、自身のキャリアを見直し、必要に応じてスキルアップ(ときには転職)をはかっていくことが肝要だと指摘。

また、スキルの基礎として、スマホ、パソコンといったITの世界から離れて読書を習慣化し、考える力を身につけるべきだと語っています。

終身雇用制に守られ、安穏としていた身からすれば、もしかしたら厳しい時代の到来かもしれません。

しかし、新しい能力を身につけることで、新しい人生を切り開くチャンスが巡ってくるとすれば、決してネガティブに考えることではないはず。

それは、50歳を過ぎてから、幸いにも仕事を通して学び直しをすることができ、実際に新しい道が開けた私自身が断言できます。

また著者の言うように、AIにより、これからは短期間で学び直しができるのであれば、中高年でも臆することはありません。

先日、政府(厚労省)は70歳まで働く機会を確保するために、七つの選択肢を設け、企業に努力義務を課す方針を明らかにしました。

これから、職業人生が長くなるのは間違いないでしょう。長く仕事をするなら、やりがいを持って、楽しく働きたいもの。

そのためには、著者のアドバイスに耳を傾け、実践するのが良さそうです。

『医者が教える正しい病院のかかり方』を読みました

医者が教える 正しい病院のかかり方 (幻冬舎新書)

2019年61冊目の読書レポートは、『医者が教える正しい病院のかかり方』(著 山本健人/幻冬舎新書 初版2019年11月30日)。札幌の病理医「ヤンデル先生」が、SNSで本書を評価しているのを目にして、手に取りました。

著者は、京都大学附属病院に勤務する消化器の専門医。「外科医けいゆう」のペンネームで、医療情報サイト『外科医の視点』も運営しています。

本書は、「医師と患者の垣根をなくし、患者が上手に医療を利用できる環境を作りたい」という著者の願いのもとに書かれたもの。

命を守り、日々健康で過ごすために知っておくべき60の医療情報を、5つのテーマ―「病院」、「医師」、「がん」、「救急車」、「薬」、「日常のトラブル」―に分けて、私たち(患者)が知りたいこと(知りたいであろうこと)に答える形で紹介しています。

「どの程度の痛みで病院に行ったらいいのか」、「何科に行ったらいいのか」、「インターネットで医療情報を検索するときに注意することは」…。

「病院に行くときの服装は」、「専門医の肩書は信用していいのか」、「医師の出身大学は気にすべきか」…。

「がんになったとき、病院・治療法・手術法はどう選べばいいのか」、「がん検診はどう受けたらいいのか」…。

「救急車を呼ぶか迷ったらどうするか」、「救急外来ではどんな治療をするのか」…。

「薬は飲み続けなければいけないのか」、「薬の正しい飲み方は」…。

「風邪薬は風邪を治すのか」、「点滴は風邪に効くのか」、「切り傷・すり傷のきれいな治し方は」「お腹が痛くなったら」…。

多くの人にとって、気になることばかりですが、著者の説明は丁寧でわかりやすく、納得できるもの。もちろん参考文献もきちんと明示されていて、怪しげな“健康本”とは一線を画しています。

いい医療を受けるためには、医師や病院の事情について、ある程度知っておくことも大事。本書はそれを手助けしてくれることは間違いないでしょう。

著者によれば、本書は「医師と病院の取扱説明書」とのこと。一家に一冊あっても良さそうです。