えむと、メモランダム

読んだ本と出来事あれこれ

『悩んでも迷っても道はひとつ マリ共和国の女性たちと共に生きた自立活動三〇年の軌跡』を読みました。

読書ノート2024年の7冊目は『悩んでも迷っても道はひとつ マリ共和国の女性たちと共に生きた自立活動三〇年の軌跡』(著 村上一枝/小学館/初版2024年2月27日/装画 小池アミイゴ)。書店で目にして、手に取りました。

本書は、西アフリカ マリ共和国の農村地域で、30年以上に渡り住民の生活向上と自立のための支援活動を続け、ノーベル平和賞にもノミネートされた村上一枝氏が、その軌跡を自ら振り返ったもの。

48歳で小児専門の歯科開業医を辞め、マリに単身赴いた経緯に始まり、困難を乗り越えながら活動に取り組む様子を数々のエピソードとともに紹介し、活動に対する思いを綴っています。

村上氏は、「人生の後半にはこれまで得たことをフィードバックしていく時期がある」と思っていたそうです。

ただそうは言っても、決して若くはない年齢で、築いた地位を捨て、私財を投じ、遠くアフリカの地でボランティア活動を始めるなど、誰もができることではありません。

大きな決断には驚くだけでしたが、苦労を厭わず、並々ならない情熱を傾け奮闘する村上氏の姿と、村上氏を信頼し、共に取り組む住民の姿は、何より心に残りました。

村上氏の取り組みは、自然環境の保護、識字率向上のための学校建設、助産師の育成と産院開設、衛生知識の普及、女性の収入獲得のための技術指導など多岐に渡ります。

人知れぬ困難もあったはずですが、常に住民の自立を最優先に考え、住民に寄り添い、女性ならではの視点から活動してきたことが、見事な成果につながったのだと思います。

ところで本書では、村上氏の言葉に頷くことが何度もありました。

「過保護的な気遣いより相手に任せ、見守る姿勢が良い結果につながる」。「人の育成で大切なことは、本当のことを言い、本質を話し、丁寧に話を聞くこと」。「問題を解決するということは、新たな問題を発見すること」。「より良い結果を得るためには、順序を踏まなければ目的に到達できない。忍耐強く、繰り返し続けることが不可欠」…。

貴重な経験に裏打ちされた言葉には説得力があり、引き付けられます。

村上氏は今年84歳になられますが、支援活動は楽しく夢のあることで、これからも続けたいと語っています。

歳を重ね、何事も億劫になりがちな自分には、大きな刺激となりました。