読書ノート2024年の4冊目は『夜行列車盛衰史』(著 松本典久/平凡社新書/初版2023年12月15日)
“鉄オタ”ではないのですが、「夜行列車」という文字が懐かしく、手に取りました。
本書は、鉄道ジャーナリストの著者が、明治22年(1889年)に誕生した日本の夜行列車の歴史を振り返った一冊。
鉄道に関する著者の豊富な知識をもとに、当時の時刻表や鉄道写真などもふんだんに示しながら、130年に渡る夜行列車の盛衰を詳しく紐解いています。
本書によれば、初めての夜行列車は、新橋・神戸間を約20時間で走行したそうです。現在では考えられないスピードですが、当時の人からすれば、想像を超えた乗り物だったかもしれません。
その後寝台車や特別急行も登場し、夜行列車の運行は拡大。そして敗戦の混乱を乗り越え、日本の経済発展に夜行列車も並走し、やがて最盛期を迎えます。70年代に起きた「ブルトレブーム」は社会現象にもなりました。
ところがそれ以降、「北斗星」や「トワイライトエクスプレス」などの豪華列車が話題になったものの、新幹線や地方空港の整備も進み、夜行列車は次第に衰退。
現在定期運行しているのは、東京と高松・出雲を結ぶ「サンライズ」だけということで、時代の流れとはいえ隔世の感があります。
著者は、夜行列車が消えいくことを惜しんでいるのですが、私にも、夜行列車には懐かしく、忘れがたい思い出があります。
大学入学前、新潟から夜行の「佐渡」に乗って、東京の下宿を探しに来たこと。
新入社員研修で、先輩社員と一緒にその「佐渡」に乗って上野駅から新潟の取引先に赴いたこと。
東北新幹線がまだ開通していない時分、上野駅の1階ホームから、青森には「ゆうづる」、秋田には「あけぼの」、盛岡には「北星」に乗って出張していたこと。
会社の飲み会のために新幹線に乗り遅れ、京都から「銀河」に乗って東京に帰ったこと。
関西に住んでいた頃、まだ小さかった子供たちを引き連れ、京都から「つるぎ」に乗って新潟まで帰省したこと。
長い人生のひとコマに過ぎませんが、そのときの情景が今でもはっきりと頭に浮かんできます。
新幹線が延伸し、夜行バスが日本全国を走る。もう夜行列車の活躍する場はないのかもしれませんが、消えてしまうと私の思い出までなくなりそう。たとえ一路線でもいいから、走り続けてほしいと願わずにいられません。