昨日(15日)、東京芸術劇場でNODA・MAP第23回公演 『Q:A Night At The Kabuki』を観ました。
演劇公演を観るのは久しぶり。イギリスのロックバンド、クイーンのアルバム『オペラ座の夜』と演劇を融合させた野田秀樹さんの新作ということで、とても楽しみにしていました。
作品は、シェークスピアの戯曲「ロミオとジュリエット」をベースに、キャピレット家とモンタギュー家を日本の源氏と平家に置き換え、さらに、未来の(それからの)ロミオとジュリエットが登場するという、時空と場所を飛び越えた驚きのもの。
未来のジュリエットである「それからの愁里愛(じゅりえ)」を松たか子さん、未来のロミオである「それからの瑯壬生(ろうみお)」を上川隆也さん、ジュリエット「源の愁里愛」を広瀬すずさん、ロミオ「平の瑯壬生」を志尊淳さんが演じ、竹中直人さん、橋本さとしさん、羽野晶紀さん、そして野田秀樹さんといった方々が脇(「脇」というには個性が強過ぎですが)を固めています。
物語は、出会って5日間で死ぬことになる自分達の運命に抗おうと、あれやこれや手を尽くす、「それからの愁里愛」と「それからの瑯壬生」を軸に展開。
「それからの愁里愛」と「それからの瑯壬生」、そして「源の愁里愛」と「平の瑯壬生」に通い合う愛情はせつなく、一見悲しいラブ・ストリーのよう。
しかし、4人を取り巻く人々との間で繰り広げられるドラマでは、人間の愛と憎しみ、愚かしさや悲しさが描かれ、また歴史の中で消えていった“名もなき人々”の無念の声が聞こえてきて、観る者に強い印象を残します。
驚いたのは、第二幕でシベリア抑留を彷彿とさせる場面が出てきたこと。「手紙」が届かなかったくだりでは、辺見じゅんさんの『収容所(ラーゲリ)から来た遺書』が思わず頭に浮かびましたが、野田さんの戦争に対する強い思いが胸に迫ってきました。
舞台で重要な役割を演じる病院のベッド。
役者が出入りする回転扉、(恐らく)差し金を使って飛ばす紙飛行機、そして俊寛や宙乗りをイメージする演技など、歌舞伎を思い起こさせる道具や演出。
出演者の躍動感あふれる動きと、間断なく降り注がれる言葉のシャワー。
現代社会への皮肉と、観客を圧倒し、包み込むクイーンの音楽。
とにかく、一瞬たりとも舞台から目を離すことができず、野田秀樹さんの世界にどっぷり浸かってしまいました。
夜7時に開演し、終わったのは10時。あっという間の3時間で、会場でプログラムとトートバックを買い、満足感いっぱいで帰宅の途につきました。
(会場で展示していた舞台模型とパネル)
(トートバック、プログラム、本人確認が終わったあと手渡されるQカード)