えむと、メモランダム

読んだ本と出来事あれこれ

『新版 20週俳句入門』を読みました

新版 20週俳句入門 (角川俳句ライブラリー)

2017年52冊目の読了は、『新版 20週俳句入門』(藤田湘子/角川学芸出版 初版平成22年4月25日)です。1988年に『20週俳句入門』が立風書房から刊行、2000年に改訂版として『新版 20週俳句入門』が学習研究社から発刊、そして本書に至っていて、実に30年に渡って読まれている俳句入門書です。

この前に読んだ『人生の節目で読んでほしい短歌』(永田和弘)で、「一首一首の歌のなかには、その一瞬一瞬の<時の断面>が輝いているはず」という言葉に心がひかれ、自分も、生きていた瞬間を言葉に残すことができたらと思いました。ただ、短歌はハードルが高そうなので、本書を手にとってみました。

本書は、まったくの初心者でも、「型」を覚えることで、ある程度の俳句を作れるようになることを目指すものです。カルチャー教室の生徒に教えているようなスタイルで進むのですが、内容はとてもわかりやすく、また実践的で、紹介されている「型」を習得すればそれなりに作れそうです。

本来はタイトル通り20週かけて、俳句を作りながら読まなければいけないのでしょうが、どんなものか知りたくて普通に読み通しました。あとは、自分がどこまで本気かということになります。

読後感(評価なし)

『人生の節目で読んでほしい短歌』を読みました

人生の節目で読んでほしい短歌 (NHK出版新書)

2017年51冊目の読了は、『人生の節目で読んでほしい短歌』(永田和宏/NHK出版新書 初版2015年3月10日)です。この一カ月ほどで著者に関係した本を2冊読みましたが、本書は書店でたまたま目にして手に取りました。著者の選歌集を読んだのは岩波新書の『近代秀歌』以来です。

本書は、著者の永田和宏さんが、人生の節目で詠われた短歌を選んで解説を加え、さらに歌にまつわる自分の思いを綴ったものです。全部で200首ほどの短歌が、第一部の「若かりし日々」では「恋の時間」「青春の日々」「デモの隊列」「卒業」「結婚」といったテーマに分けて、第二部の「生の充実のなかで」では、「出産」「労働の日々」「貧しかりし日々」「子の死・親の死」「退職」「ペットロス」といったテーマに分けて、第三部の「来るべき老いと病に」では、「老いの実感」「病を得て」「ものを忘れて」「介護の日々」「死を見つめて」といったテーマに分けて、取り上げられています。

安保闘争や大学紛争、子供の死やペットロスといったテーマはなかなか実感が伴いませんが、多くの歌は何かしら経験があったり、「老い」のように、これから直面するものであったりするため共感するものが多く、過去を思い浮かべながら、また自分と置き換えながら味わいました。

著者は、「生活のなかで歌を作ることによって、その時間が特別な意味を持つようになる」「一首一首の歌のなかには、その一瞬一瞬の<時の断面>が輝いているはず」と述べています。『歌に私は泣くだらう』や『家族の歌 河野裕子の死を見つめて』を読んだときにも感じたことですが、自分が生きていた瞬間を言葉に残すことができる短歌や俳句は、とてもいいものだと思います。もっと若い頃に、それに気づいていればと少し後悔しています。

著者はまた、『一瞬一瞬の時間は、自ら意識しないと、ただ漫然と流れてゆき、記憶の奥深くしまいこまれて、やがて風化してゆくだけのものになってしまいがちです。過ぎ去った時間は、すぐにほかの時間のなかにもぐりこんで隠れてしまおうとする。』とも述べています。時間が有限であることを意識せざるを得ない年齢となり、せめてこれから、自分の足跡が風化して消えるようなことがないようにしたいと、本書を読んで強く思いました。

読後感(よかった)

『本質を見通す100の講義』を読みました

本質を見通す100の講義 (だいわ文庫 G 257-4)

2017年50冊目の読了は、『本質を見通す100の講義』(森博嗣/だいわ文庫 初版2016年9月15日)です。荻窪の本屋さん「Title」が配信している「毎日の本」で本書のことを知り、手に取りました。2015年に出版された単行本の文庫化です。

 

本書は、著者が日常生活で感じたことについて書いたエッセイを、「社会」、「情報」、「言葉」、「創作」、「人生」の5つカテゴリーに分けて100話収録したものです。タイトルは何か難しい感じがしますが、見開き2ページの短いエッセイなので、構えずに気楽に読むことができます。

 

書かれている内容は面白く頭を刺激しますが、エッセイそれぞれのタイトルも印象的です。『成長時は遠望していたのに、衰退時は近視眼になる』、『知っていても知らない場合の想像はできるが、その逆はできない。』、『「わかっちゃいるけど」は、つまり「わかっていない」のと同じ。』、『「時代が追いついてきた」というとき、たいていは追いついていない。』、『何をつくるかは考えるのに、どう作るかは後回しになる』『個人を歯車に喩える時代は終わった。』『始めるのも、やめるのも、同じくらい力がいる』、『抱えている問題の多さが、その人の深みを醸し出す』といったフレーズは、これだけでも心に残ります。

 

著者は、私たちが普段当たり前だと思っていることや、特に問題とも思えにないようなことにも、「本当はそうではないだろう」と、ひっかかります。著者の言うことがすべて正しわけではないでしょうが、ともすると枝葉末節にとらわれたり、声の大きい人に従ったりと、物事が持っている本来の姿(=本質)を見失いがちになってしまう私達には警鐘となる本だと思いました。

 

読後感(まずまず)