えむと、メモランダム

読んだ本と出来事あれこれ

『失われたドーナツの穴を求めて』のトークイベントに行ってきました

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『失われたドーナツの穴を求めて』の刊行記念トークイベントが荻窪の書店「Title」さんであり、行ってきました。

当日(8月1日)は、本書の編者である南山大学の芝垣亮介先生と奥田太郎先生、そして本書にも登場するドーナツ店「ハグジードーナツ」の店主松川寛紀さんが来られました。テーマがドーナツだからでしょうか、会場は女性がほとんどで、私と同じ男性は数えるほど。ちょっと予想外でした。

イベントは、まず芝垣先生と奥田先生が本書のあらましを話され、続いて松川さんを交えたドーナツ談義があり、そして参加者も一緒になって本書の核心である「穴」について考える、といった形で進みました。

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芝垣先生と奥田先生は、本当に大学の先生なのかなと思うほどフレンドリーで、話もテンポがあって面白く、まるで掛け合い漫才を聞いているようでした。また松川さんは、本の写真から想像していたイメージとは違って控えめな方で、やはり見ると聞くとは大違いです。

本にあいている穴が手作業によるものであること(聞いてびっくりしました)や、カバーに隠された秘密、また芝垣先生と松川さんの出会いなど、ここに来なければ知らなかった話がたくさん聞けたのはもちろん良かったのですが、穴の大きさでドーナツの味が違うのか4種類のドーナツを食べ比べて試してみたり、参加者も松川さんのお店のドーナツを食べたり(私は一番ベーシックなドーナッツをいただきました。とても美味しかった。)、金魚を使って「穴」について考えてみたりと、とにかく楽しい内容で会場は盛り上がり、あっという間に終了時間の21時になってしまいました。

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たまたま手にした1冊の本が、普通なら会うことのない人との出会いを作り、めったない経験をさせてくれました。ドーナツの穴はこの夏の心に残る思い出です。

せっかくなので、本にサインをしてもらい、帰宅の途につきました。

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西友小金井店が閉店しました

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JR武蔵小金井駅北口にある西友小金井店が今日で閉店となりました。イトーヨーカドー進出の影響で、同じく北口にあった東急ストアと長崎屋が相次いで閉店した後も、ある種超然として営業を続けていましたが、とうとう50年以上の歴史に幕を下ろしました。

20年以上前に小金井に移り住んできたときには、すでに時代に取り残されたような雰囲気でしたが、出来た当初は地域のランドマーク的存在だったそうで、古くから近辺に住んでいる方にとっては、感慨深いのではないでしょうか。

南口は再開発ですっかり街並みが変わりましたが、北口も再開発計画があるようなので、建物は解体され、新しいビルが建つのかもしれません。駅前の一等地だけに、これからどんなふうに変貌していくのかちょっと気になります。

『失われたドーナツの穴を求めて』を読みました

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2017年60冊目の読了は、『失われたドーナツの穴を求めて』(芝垣亮介・奥田太郎/さいはて社 初版2017年7月4日)です。荻窪の書店「Title」さんのイベント案内で本書のことを知り、面白そうなので手に取りました。同店で行われる刊行記念のトークイベントにも参加する予定です。

本書を手にしてまず驚いたのは、本の右肩に「穴」があいている(貫いている)ことでした。もちろんドーナツの穴の本だからだと思います。子供向けの本には変形・加工したものがよくありますが、穴があいている一般書を目にしたのは初めてです。これだけでも本書は希少価値があるかもしれません。
いつもこのブログで使っているネット書店の画像ではわかりにくいので、本に鉛筆を刺した写真を自分で撮りました。

本書は、「ドーナツの穴」について、歴史学、経済学、数学、言語学、哲学などの専門家が、それぞれの立場で研究・調査した成果をまとめたものです。研究成果の論文集といってもいいかもしれません。「ドーナツの穴」の研究など突飛すぎて普通では考えられませんが、大学の先生たちは、大真面目に、そして遊び心を持って取り組んでいます。

論文といっても、専門家向け(日本にドーナツの穴の専門家はいないと思いますが)ではないので、難解なものではなく(数学的な話、哲学的な話はちょっと難しかったですが)、ドーナツの穴の歴史、ドーナツの穴の売り方、ドーナツの穴から考えるコミュニケーション、言語学を用いたドーナツの穴の分析など、どれも興味深いものでした。いつからドーナツに穴があいたのか、穴はどうやって作られるのか、穴と輪の違いは何か、とにかく錆びつきかけた頭に刺激をどんどん与えてくれます。また本書には、ドーナツの穴に関係するコラムも収録されています。中国とドーナツについての話、実際のドーナツ屋さんの話、競馬の穴の話など、これも面白く読みました。

本書を読んで、好奇心・探求心があれば、どんなものにも新しい発見があり、どんなものからでも新しい発想が生まれ、新しい世界が広がるということがよくわかりました。本書の意義もおそらくそこにあるのだと思います。
「当たり前」「くだらない」「つまらない」と思った瞬間、思考は停止してしまい、様々な可能性が消えていきます。それは何も学問の世界だけでなく、仕事や日常生活でも同じに違いありません。ドーナツの穴を通して、大切なことを教えてもらった気がしました。

「Title」さんのトークイベントでどんな話が出るのか、とても楽しみです。

読後感(おもしろかった)