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読んだ本と出来事あれこれ

『世界一シンプルで科学的に証明された究極の食事』を読みました

 

世界一シンプルで科学的に証明された究極の食事

2018年43冊目の読了は、『世界一シンプルで科学的に証明された究極の食事』(津川友介/東洋経済新報社 初版2018年4月26日)。新聞のコラムで本書ことを知り、手に取りました。

今、健康に関するTV番組は数知れず、ネットでは健康情報が溢れ、書店ではビジネス書のコーナーにまで健康本が並んでいます。日本は世界一、二の長寿国ですが、それでも日本人の健康への関心は高く、健康を飽くことなく追い求めているようです。(本書を手にした私もその一人かもしれませんが)

しかし、カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)の内科学助教授である著者は、日本で目にする健康情報には誤ったもの・根拠のないものが多いとして質の低さを嘆き、この状況に風穴を開けたいと考えていて、それが本書の執筆にもつながったようです。

本書では、著者により科学的根拠(エビデンス)に裏付けられた、体に本当に良い食事(食品)が紹介されています。経験談や必ずしも正しいとはいえない役所のガイドラインではなく、「科学的に根拠があるのか、それともないのか」それが唯一の判断基準なのですが、考えてみれば当たり前のことです。

ちなみに、体にいいのは、魚、野菜と果物(ジュースやじゃがいもは除く)、茶色い炭水化物、オリーブオイル、ナッツ類など。体に悪いのが確実なのは、赤い肉(牛肉・豚肉など)と加工肉(ハム・ソーセージ)、白い炭水化物(じゃがいもを含む)、バターなどの飽和脂肪酸。よく知られていることやニュースで話題になった食品もありますが、客観的なデータに基づいているので、よく理解できます。

本書で印象に残ったのは、リコピン、βカロチンといった食品の「成分」は多くの消費者の興味をひきつけるため、マーケティングに使われているという話。確かに、サプリメントや健康食品の広告では、どんな成分が含まれているのか、盛んにアピールしていますが、「成分」だけを重視するのはまったく意味がないようです。

内容はシンプルかつ明快。信頼性も高く、当面、健康情報は本書で十分かもしれません。

読後感(参考になった)

『これからの本屋読本』を読みました

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2018年42冊目の読了は、『これからの本屋読本』(内沼晋太郎/NHK出版 初版2018年5月30日)。ツイッターで本書のことを知り、手に取りました。

本書の独特の装幀は目を引きますが、不思議な形は家(本屋)を表わしているようです。ネット書店の画像ではわかりにくいので、この記事の写真は自分で撮りました。

著者の内沼さんは、ブックコーディネータ、クリエイティブディレクターの肩書きを持つ一方、本に関するクリエイティブチーム「NUMABOOKS」の代表を務め、東京・下北沢に新刊書店「本屋B&B」も構えています。今、出版業界で内沼さんのことを知らない人は“もぐり”かもしれません。

本書は、その内沼さんが、本に関わった15年の経験をもとに書いたもの。出版不況といわれ、街の本屋さんが次々に消えていくなか、内沼さんは本屋と本の魅力を語り、本とは何かを考え、「本屋になる」ことの意味を独自の視点から明らかにしたうえで、「新しい本屋像」を提示し、本屋をやってみたいという人に向けて、具体的なノウハウを紹介しています。

内容はかなり実践的なので、実際に本屋を開業し、本をそろえて売買したいという人にとっては、本書はまさに恰好の教科書となるでしょう。“バイブル”と言っても過言でないかもしれません。

しかし、内沼さんが考える本屋は、商売としてやる本屋だけではありません。内沼さんは、「本を専門としている人」(出版社や印刷会社で働く人、ブックデザイナーなどはもちろん、フリーマーケットに出店する人、本のブログを書く人、ボランティアで読み聞かせをやる人なども含まれます)も本屋であり、さらに本を選んで手渡す側と受け取る側という関係が成立すれば、手渡す人(例えば子どもに本を買い与える親)も広い意味で本屋であると語り、また「かせぎ」(お金を稼ぐ)や「つとめ」(社会のために務める)だけでなく、「あそび」で本屋になることも勧めています。

そこには、私たちが今まで考えたこともない多種多様な本屋の出現があり、本屋の世界が大きく広がります。おそらく内沼さんは、本屋や出版業界の苦境など関係なく、そして商売でやるにせよ、そうでないにせよ、世の中にたくさんの本屋が生まれ、私たちの間をたくさんの本が行き交うことを願っているのだと思います。

もっとも、本屋がいい仕事をするためには、本の作り手である出版社のいい仕事が不可欠です。これまで出版業界を支えてきたシステムに綻びが目立つようになり、本に対する意識も変化している中で、旧態依然とした仕事ぶりでは、本屋はもちろん読者にも満足してもらえません。本屋が変わることは必要ですが、出版社も「これからの出版社」を考え、変わっていくことが求められます。

まずは、柳の下に三匹までドジョウがいるとしても、同じ著者、同じテーマの集中豪雨的な出版は考え直してもらいたいものです。

内沼さんからすれば、このブログを書いている私も「本屋」ということになりますが、本書を読んで、「あそび」でもいいので、もう少し本屋らしい本屋になってみたいという気持ちが湧いてきました。

読後感(よかった)

父の日 「賀茂金秀 純米大吟醸35」

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父の日ということで、息子夫婦から日本酒をプレゼントしてもらいました。銘柄は広島のお酒で「賀茂金秀 純米大吟醸35」。初めて知ったお酒ですが、ネットで調べるとなかなかのお酒のようで、口開けするのがとても楽しみです。

父の日というと、毎年父親に何を贈るか、頭を悩ましていました。その父を4月に亡くし、今年からそんな"恒例行事”もなくなってしまい、少し寂しい気持ちです。