えむと、メモランダム

読んだ本と出来事あれこれ

『明治維新の意味』を読みました。

明治維新の意味 (新潮選書)

2021年1冊目の読書レポートは『明治維新の意味』(著 北岡伸一/新潮選書/初版2020年9月20日)。

昨年、新聞書評で取り上げられているのを見て手にしたものの、しばらく積読状態。この正月休みの間で、ようやく読むことができました。

本書は、日本政治外交史の専門家で、国際協力機構(JICA)の理事長でもある著者が、明治維新の世界史的な意義を明らかにするもの。

まず、江戸幕藩体制のあらましと、ペリー来航から江戸幕府崩壊までの過程を概説。

そのうえで、明治新政府成立後、内憂外患を乗り越えながら行われた新しい国家建設の実態を、大久保利通、伊藤博文、福沢諭吉らの言動にスポットをあてながら、また諸外国と比較しながら、簡潔に描いています。

明治維新について、知っていることといえば、学校の授業で教わった程度のもの。

ところが、版籍奉還、廃藩置県、徴兵制度、地租改正、義務教育、殖産興業、憲法制定、帝国議会開設…。

わずか30年ほどで、封建体制を一気に改革し、西洋の列強に伍す近代国家がつくり上げられていく様子を改めて目にし、それがいかに凄いことか、本書で思い知ることになりました。

岩倉使節団に同行した歴史家の久米邦武は、時代の変化について「是殆ど天為なり、人為にあらず」と語ったそうですが、そう思うのも無理からぬことです。

しかし、「人」なくして、これだけのことが成し遂げられるはずはありません。

大久保利通や伊藤博文といった傑出した人物の存在はもちろんですが、「幕府側の人材を惜しみなく用いた」とあるように、優秀な人材を広く抜擢・登用したことも、明治維新を推し進めた原動力であったことは間違いないでしょう。

著者によれば、明治維新のキーワードは「公儀輿論」。政治を担う意思と能力のある人間が、私的な利害は度外視して国益だけを考え、徹底して議論を尽くしたことが“維新の礎” になったということです。

そして著者は、「明治維新以来の政治でもっとも驚くべきことは、日本が直面した最重要課題に政治が取り組み、ベストの人材を起用して、驚くべきスピードで決定と実行を進めていることである」とも語り、積極果断な政治を評価しています。

時代が下り、政治の大衆化が進むなかで、リーダーの姿も随分変わってしまいました。

選挙というシステムで政治家が選ばれる以上、「最も優れた人材が、全力で課題に取り組む」といったことは、望めそうにありません。

けれど現代の日本も解決すべき問題が山積。人口減少が進む中、新しい国づくりを進めていくときを迎えています。

本書を読んで、政治家にはせめて「自分がこれからの日本の礎を築く」くらいの気概を持ち、しがらみを捨てて、課題解決にあたってほしいと思わずにいられませんでした。

 

2021年 稲穂神社初詣

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新年の初詣は、いつも地元小金井の稲穂神社。今年も例年どおり、朝7時くらいに出向き、お参りを済ませました。

この神社は地元住民の御用達なので、初詣といっても、“分散参拝”を気にするほど、混雑することはありません。

今日も、早朝ということもあって、お参りする人はまだ数えるほど。ただそれでも、いつもは賽銭箱の上に吊られている鈴が取り払われ、参道には消毒用のアルコールスプレーが置かれ、コロナ禍の初詣を目の当たりにしました。

昨日の東京の感染者1,337人にはさすがに驚きましたが、今日も783人。

一刻も早く収束して、平穏な日常が戻ってほしいと願わずにはいられません。

2020年の読書

今年読んだ本は全部で61冊(単行本28冊、新書28冊、文庫2冊、選書2冊、コミック1冊)。そのうち感想を書いたのは43冊。

去年は86冊を読み(単行本35冊、新書39冊、文庫6冊、選書4冊、コミック2冊)、63冊の感想を書いたので、随分減ってしまいました。

読了数が少なかったのは、コロナの影響でリモートワークが増え、行き帰りの電車で本を読めなくなったのが一番の理由。

感想が書けなかったのは、仕事が忙しく、思うように時間が取れなかったから。

少し残念な年になってしまいましたが、それでも、心に残る本にたくさん出会い、読書の愉しみを味わうことができました。

嬉しかったのは、昨年に続き、著者の方や編集者の方から、SNSで直接メッセージをいただいたこと。

そして、何よりありがたかったのは、今年も多くの方に記事を読んでいただいたこと。

ますます「本を読もう」という気持ちになります。

ちなみに、読んだけど感想が書けなかったのは次の18冊です。

『モヤモヤの正体』(尹雄大/ミシマ社)

『奇妙な瓦版の世界』(森田健司/青幻社)

『国家・企業・通貨』(岩村充/新潮選書)

『年収100万円で生きる』(吉川ばんび/扶桑社新書)

『すべての不調は口から始まる』(江上一郎/集英社新書)

『ファシズムの教室』(田野大輔/大月書店)

『家族遺棄社会』(菅野久美子/角川新書)

『代謝がすべて』(池谷敏郎/角川新書)

『日本史サイエンス』(播田安弘/ブルーバックス)

『高齢ニッポンをどう捉えるか』(浜田陽太郎/勁草書房)

『LIFE SPAN』(デビッド・A・シンクレア マシュー・D・ラプラント/東洋経済新報社)

『出口版 学問のすすめ』(出口治明/小学館)

『健康から生活を守る』(大脇幸四郎/生活の医療社)

『昭和の寄席の芸人たち』(赤塚盛貴/彩流社)

『やばいデジタル』(NHKスペシャル取材班/講談社現代新書)

『ルポ トラックドライバー』(刈屋大輔/朝日新書)

『自分の頭で考える日本の論点』(出口治明/幻冬舎新書)

『いつか中華屋でチャーハンを』(増田薫/スタンドブックス)

それにつけても、一刻も早くコロナが収束し、おだやかな日常が戻ってきてほしいと願うばかりです。