えむと、メモランダム

読み散らした本と出来事あれこれ

『葬式格差』を読みました

葬式格差 (幻冬舎新書)

今年35冊目の読了は、『葬式格差』(島田裕巳 /幻冬舎新書 初版2018年3月30日)。3月に本書を目にした時はあまり興味を覚えず、手に取ることもありませんでした。

ところが4月に実父が急逝。喪主として葬儀を執り行ったのですが、知らないこと、戸惑うことばかり。一気に身近なテーマとなり、書店で改めて本書を手にして、すぐに買い求めました。

本書では、宗教学者である著者によって、日本における葬式の変遷や実態、地域や宗派による葬式の違い、葬式やお墓をめぐり今起きている出来事など、葬式にまつわるさまざまなエピソードが紹介されています。

東京23区ではほとんどが民間火葬場であること、日本で墓石を建てるようになったのは火葬が広まったことが大きく影響していること、香典(現金を包む)の習慣が広まったのは1970年代以降であることなど、本書で初めて知ったことは数多くあり、どの話も興味深く読みました。

ただ何といっても、同じ日本人でありながら。地域や宗派によって葬儀の方法や考え方が全く異なることには驚かされます。東日本と西日本では遺族が引き取る遺骨の量が違う、北海道では香典を出すと領収書が渡される、葬式の前に火葬する地域があることなど思いもよりませんでした。タイトルには“格差”という言葉が使われていますが、“格差”というより“違い”といった方がしっくりきます。

本書では、演出過剰な葬式の例も紹介されています。棺に花を供える際に遺体に声をかける、故人のために色紙を書く(故人は読めませんが)、集合写真を撮る。いかにもありそうで、この程度なら参列者もなんとか対応できそうです。ただし、故人が好きな歌(本書で紹介されているのは「見上げてごらん夜の星を」)を参列者が合唱するというのは、さすがにびっくりしてしまいます。自分が参列者なら困惑することは間違いありません。

父の葬儀の際も、父の写真を使って式場の入り口にメモリアルコーナーが作られました。まるで結婚式のウェルカムボードのようだとも思ったのですが、やがて「故人をしのぶスライド―ショー」の上映が当たり前のように行われるときが来るかもしれません。

今回喪主を務めましたが、葬式に対する知識などほとんどなく、もちろん何をどうしていいのかさっぱりわからず、悲しみに浸る間もなく、葬儀社と相談しながら慌ただしく葬式の形や内容を決めました。参列者の皆さんからは「いい葬式だった」と声をかけてもらい胸をなでおろしたのですが、果たして父が望んだ葬式だったのか、それはわかりません。

家族のあり方が大きく変化する中、葬式やお墓に対する考え方は多様化しています。だからこそ相応の年齢になったら、自分が死んだらどんな葬式にするのか、遺骨はどうするのか、しっかり考えて家族に伝えておくべきだと、本書を読んで、そして父の葬儀を通して実感しました。

読後感(考えさせられた)