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『こうして知財は炎上する ビジネスに役立つ13の基礎知識』を読みました

こうして知財は炎上する―ビジネスに役立つ13の基礎知識 (NHK出版新書 558)

2018年62冊目の読了は、『こうして知財は炎上する ビジネスに役立つ13の基礎知識』(著 稲穂健市/NHK出版新書 初版2018年8月10日)。仕事に関係するテーマということで手に取りました。

「知財」とは知的財産権(著作権、特許権、実用新案権、意匠権、商標権など)のこと。最近は東京オリンピックのエンブレム問題や、音楽教室とJASRACの争いなどで世間の関心を集めることはありますが、普通の人にとっては縁遠いものかもしれません。

本書はこの知財について、弁理士で東北大学研究推進・支援機構の特任准教授でもある著者が、近年話題となった様々な事例(揉めごと)を題材にして、「何が問題なのか」「揉めた原因は何か」「どうすればトラブルを回避できるのか」といったことを説明しながら、その基本的なポイントを一般の人に向けて解説したものです。

知財の解説書というと、権利ごと“縦割り”で解説するものがほとんどですが、本書はそれにとらわれず、各事例を揉めた原因ごとに「権利を主張する側の行為」、「他人のものを模倣・流用する側の行為」、「知財に関する認識のズレ」、「知財制度における抜け道の存在」の4つに分類し、それぞれの権利を関連づけながら解説しています。実務では権利が絡み合うことが多いので、実際的と言えます。

内容は基本的なものですが、知財についてまったく知識がないと少し難しく感じるところもあるかもしれません。ただし紹介される事例は、スケートの羽生結弦選手と「くまのプーさん」、「白い恋人」VS.「面白い恋人」、リカちゃん人形と「香山リカ」、カーリングで有名になった「そだねー」、「コメダ珈琲店」VS.「マサキ珈琲」、「ひこにゃん騒動」など目を引くものが数多く、知財の面白さ(争いの当事者は決して面白くありませんが)を知ることができます。

個人的には、仕事の守備範囲から少しはずれる「特許」や「商標」のエピソードは初めて知ったものが多く、とても参考になったのですが、一番驚いたのは「村上春樹」が商標登録されていること。商標の範囲は色や音にまで広がっているので、これから先も、名前に限らず思いもかけないものが商標として登録されそうです。

今や誰もが簡単に「コピー」や「配信」ができる時代。またSNSでは「似ている」「似てない」は恰好の話題であり、知財は身近なものになっています。それだけに、仕事でも普段の生活でも「知らなかった」では済まなくなり、これから「知財リテラシー」を高めることはますます重要になるでしょう。本書はその手助けになるはずです。

読後感(参考になった)