Bunkamuraシアターコクーンで上演中の、コクーン歌舞伎『天日坊』を見物しました。
コクーン歌舞伎は、古典歌舞伎をまったく新しい演出で演じるもの。
今回の演目『天日坊』は、10年ぶりの再演とのことですが、コクーン歌舞伎を見物するのは初めてで、楽しみにしていました。
物語の舞台は鎌倉時代。ふとしたきっかけで、源頼朝のご落胤に成りすました孤児の法策(中村勘九郎)が、鎌倉に向かう道中で出会った盗賊の地雷太郎(中村獅童)とその妻・人丸お六(中村七之助)を引き連れ、天日坊と名乗って幕府転覆を企てるというお話。
「俺は誰だあっ!」が、このお芝居のキャッチコピーでありテーマですが、脚本の宮藤官九郎さんによれば、「俺は誰だ?私は誰だ?その答えを探す旅こそが人生。」
敷かれたレールから外れ、自分のアイデンティティを求め疾走する主人公の姿は、言葉通りのもので、心に残ります。
歌舞伎をベースにしながらも、「持続化給付金」といったセリフも登場するクドカンさんらしい脚本。
小屋を目まぐるしく出し入れし、ダイナミック行う場面転換。
邦楽ではなく、トランペット、キーボード、ギターが鳴り響く会場。
法策の揺れ動く心情を見事に表現する、勘九郎さんの演技。
何といえない色香を漂わす、七之助さんのあでやかな姿。
舞台を引き締める、獅童さんの圧倒的な存在感。
そして、クライマックスで、歌舞伎さながらに附け打ちとともに繰り広げられる、迫力いっぱいの大立ち回り。
斬新で刺激的な舞台と、役者さんたちの熱演に目が釘付けとなり、初めてのコクーン歌舞伎を心ゆくまで楽しみました。
ところで、今回の再演では、コロナの影響で上演時間が30分短縮されたそうです。
クドカンさんは「泣く泣くシナリオを削った」と語っていますが、せっかくのお芝居なのにちょっと残念。機会があれば、ぜひ「完全版」を観たいものです。
見物記念にトートバックを買って家路につきました。