えむと、メモランダム

読み散らした本と出来事あれこれ

『死ぬこと以外かすり傷』を読みました

死ぬこと以外かすり傷

2018年66冊目の読了は、『死ぬこと以外かすり傷』(著 箕輪厚介 /マガジンハウス 初版2018年8月28日)です。私の年齢からすると、30代の人が書いた仕事論というのは遠い世界の話ですが、同じ業界にいる者として箕輪氏がどんな仕事をしているのか興味があり、手に取りました。

著者の箕輪氏は、ビジネス書でベストセラーを連発している編集者。幻冬舎に籍を置きながら、News Picks Bookの編集長であり、またオンラインサロンを主宰するなど枠にとらわれない活動も注目を集めています。

本書は、箕輪氏が編集者として考え、実践してきたことを32の行動原理にまとめたもの。6つのパート-[考え方]、[商売のやり方]、[個人の立たせ方]、[仕事のやり方]、[人間関係の作り方]、[生き方]-に分けて箕輪流の仕事術を自ら語っています。

仕事ぶりは異彩を放ち、目を見張るものがありますが、話の内容も熱く迫力があり、見方によれば挑発的。「トラブルに身を投げろ!」、「バカなことにフルスイングせよ」、「安全安心を破壊せよ」、「言ってはいけないことを言ってしまえ」、「意識くらい高く持て」、「誰も行かない未開を行け」、「社員を奴隷にする会社は捨てろ」、「恥をかけ、血を流せ」、「何か一つでトップになれ」、「変わり続けることをやめない」、「目的だけをにらみつけろ」、「ただ熱狂せよ」、「数字から逃げるな」、「努力は夢中に勝てない」、この見出しだけでも若い人の心に突き刺ささりそうです。

もっとも、いつの時代でも20代、30代というのは鼻っ柱が強く、尖がっているもの。このくらいの言葉では驚かない“おっさん”も多いかもしれません。

しかしそうであっても、社会やビジネスのしくみがかつてないほど大きく変化している今、それをチャンスとして捉えることや、仕事に対する考え方・仕事の進め方を変えていくことの大切さはよく理解できます。新しい価値観を作ろうとする若い人を、古い価値観に縛られた“おっさん”がじゃまするようなことがあってはならないでしょう。

本書を読みながら、夏野剛さんが言っていた「昭和の時代は、誰でもできる仕事を効率的にこなすことが競争力になった。今は、人が考えないようなことを実現したり、誰も気づかなかったことに気づいたりすることが競争力になる。」という言葉が思いだされてきました。昔は、“出る杭”は打たれたものですが、これからは“出る杭”が大事。箕輪氏と幻冬舎の関係を見ると、そのことが現実のものとして感じられます。

個人的には、「世の中の人々が日々、何に涙し、何に悩み、何に歓喜しているのかが肌感覚で分からなければ。売れる本なんて作れない」という言葉に共感を覚えましたが、最も印象に残ったのは、あとがきで箕輪氏が「本書が出たことで、自分は死んだも同然だと思っている。自分の経験やノウハウを語ったり、本にしたりした時点でもう腐り始めている。」と語っていること。

この自己認識の深さが、箕輪氏の真骨頂とも言えそうです。

読後感(面白かった)