えむと、メモランダム

読み散らした本と出来事あれこれ

『うつりゆく日本語をよむ ことばが壊れる前に』を読みました。

うつりゆく日本語をよむ: ことばが壊れる前に (岩波新書 新赤版 1907)

2022年1回目の読書ノートは、『うつりゆく日本語をよむ ことばが壊れる前に』(著 今野真二/岩波新書/初版2021年12月17日)。書店で目にして手に取りました。

仕事柄、契約書の読み書き、ビジネス文書の作成、メールでの相談対応などがルーティンワーク。「ことば」には気を遣う毎日です。

本書は、日本語学者である著者が、この10年ほどの間に起きた日本語の変化を観察し、その変化の意味を明らかにするもの。

新聞記事の「比喩表現」や「言語表現」を例に「書き言葉」の変化を示し、「言語」と「思考」との関係、「経験の共有」、「匿名の時代」といった視点から、変化が起きた理由を考察。

次に、“キー”を使う「打ちことば」が「書き言葉」に与えている影響と、「話しことば」への波及について説明。

さらに「オンライン授業」の経験を通して、安定した「書き言葉」重要性と、「ハードな書き言葉」の習得・強化ための方法を教示。

最後に、社会のあり様と「日本語の危機」について言及し、日本語の変化にどう向き合うのか、著者の考えが示されています。

「日本語が乱れている」というのはよく耳にしますが、本書を読んで、10年という短い間であっても、日本語が動いていることを知りました。

もっとも、これまで言葉の変化に特に関心を持ったことはありません。それだけに、変化の背景にあるものや、変化の影響について、著者の指摘は示唆に富み、「言葉」について深く考えさせられることに。

特に、『粗い「器=言語」には粗い「思考」しか盛ることができない』、『思考の「器」である「書き言葉」のゆがみは、思考のゆがみにつながりかねない』という言葉は心に残りました。

また本書では、高村薫さんの『言葉の世界はいま、単語がならぶばかりのSNSの影響で弱体化しています。複雑な文章が読まれず、考えることがおろそかになっています。』という言葉も紹介されているのですが、「書き言葉」の劣化に対する危機感は、著者に限らないことがわかります。

今の世の中は、面倒なことや、手間暇かけることを避ける傾向にありますが、言葉が劣化すれば、物事を深く考える場面が減ることになるともいえ、それは社会の劣化にもつながりかねません。

そうならないためには、著者の言う「書き言葉の復権」に取り組むしかないのかもしれませんが、新聞・TV・ネットメディアには「書き言葉」の重要性を意識し、しっかりした「書き言葉」を使ってもらいたいものです。

著者は、「セミハードな書きことば」をきちんと操ることが今後重要になってくると述べています。

今更そのためのトレーニングする気にはなりませんが、著者の言うように、少し固めの新書や選書を読んで、せめて「劣化」は食い止めようと思いました。