えむと、メモランダム

読み散らした本と出来事あれこれ

『感染症の世界史』を読みました

感染症の世界史 (角川ソフィア文庫)

2020年16冊目の読書レポートは『感染症の世界史』(著 石 弘之/角川ソフィア文庫/初版平成30年1月25日)。本書の前に読んだ『感染症 広がり方と防ぎ方』(中公新書)と一緒に買い求めました。新型コロナウイルスの影響で、売れ行きは好調のようです。

本書は、2014年に洋泉社から出版された単行本を加筆修正して文庫化したもの。数々の文献や著者の体験などをもとに、人類と感染症の闘いの歴史をたどりながら、感染症の実態を探っていきます。

マラリアは、紀元前1万年前頃からすでに流行が始まっていた。

戦争が感染症を蔓延させ、戦争における病死者はしばしば戦死者を上回り、感染症が戦いの帰趨を決めた。

14世紀のペストの大流行は、ヨーロッパの中世社会崩壊の原動力になった。

スペイン風邪では全世界で8千万人、日本でも45万人もの人々が死亡した…。

本書で明らかにされる事実や様々なエピソードは、初めて知ったものが大半。古くから人を苦しめ、ときに歴史まで変えてしまう感染症の脅威を改めて認識させられました。

本書を読むと、感染症と対峙するのは人類の宿命のようなものであり、いくら医療が進歩したとしても、感染症から逃れられる日は来そうにないことを実感します。

それどころか、この半世紀に出現したエイズ、鳥インフルエンザ、SARS、エボラ出血熱など「新興感染症」はとても不気味です。

本書によれば、これらの感染症が現れたのは、人口の急増や経済の拡大で、環境破壊・大規模開発が進み、その結果安定した自然のシステムが崩壊し、野生動物と人が接触するようになったことがきっかけとのこと。

その脅威は、一つ間違うと瞬く間に世界中に広がってしまうことを、新型コロナウイルスが示しました。

それは、まるで地球環境から大きなしっぺ返しを食らったよう。人間の乱暴な振る舞いを改めない限り、いずれまた未知の感染症が現れ、人間を苦しめることになりそうです。

ところで著者は、「感染症の世界的流行は30~40年周期で発生してきたが、1968年の“香港かぜ” 以来40年以上大流行が起きていない」と警告。

また、「中国はこれまでも、何度となく世界を巻き込んだパンデミックの震源地になってきた」と指摘。

新型コロナウイルスの出現と感染拡大を“予言” しているようで驚いてしまいました。

新しい生活スタイルはともかく、有効な治療薬やワクチンが一刻も早く開発され、普通の日常が戻ることを願うばかりです。