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『興亡の世界史 地中海世界とローマ帝国』を読みました

興亡の世界史 地中海世界とローマ帝国 (講談社学術文庫)

2017年83冊目の読了は、『興亡の世界史 地中海世界とローマ帝国』(本村凌二/講談社学術文庫 初版2017年9月11日)です。2007年に同じ講談社から出版された全集『興亡の世界史04 地中海世界とローマ帝国』の文庫版ですが、登場人物が多いのに加え、見慣れない名前を確認しながら読むためペースは遅くなりがち。読み終えるまで時間がかかってしまいました。

本書はローマ帝国の歴史を誕生から滅亡まで辿るものです。1000年以上の歴史が400頁ほどで語られているので、ローマ史に詳しい人や関心のある人だと、本書では物足りなさを感じるかもしれません。しかし、小さな都市国家が地中海世界を制し、ついには世界帝国となって繁栄を謳歌、やがて衰退に向かうという古代ローマ史の流れを大まかに知ることができて、私には十分な内容でした。
また、ハンニバルのアルプス越えやカエサルのルビコン川の渡河など、これまで断片的な知識でしかなかったエピソードが、歴史の流れの一場面として蘇ったり、メセナの語源やドルの通貨記号の理由を知ったりと、思いのほか面白く読みました。

それにしても、陰謀や粛清のなかで繰り広げられる帝位継承には驚きます。権力闘争はいつの時代でも、どんな組織集団でもあることで、それが数々の物語を作るのでしょうが、ローマ史では名君、暗君、暴君そしてそれを取り巻く人々、多彩な登場人物が次々に現れるので、物語の面白さは格別なのかもしれません。

政治思想史家の丸山真男氏は「ローマ帝国の歴史には人類の経験がつまっている」と語ったそうです。さすがに本書を1回読んだくらいでその意味をつかむことはできませんが、そう思わせるものがありそうなことは、おぼろげながら感じることができました。

読後感(面白かった)