えむと、メモランダム

読んだ本と出来事あれこれ

『アベノミクスによろしく』を読みました

アベノミクスによろしく (インターナショナル新書)

2017年97冊目の読了は、『アベノミクスによろしく』(明石順平/インターナショナル新書 初版2017年10月11日)です。書店で目にして手に取りました。

本書は、弁護士である著者が、アベノミクスの実態(「中身」と「結果」)について、政府や国際機関の公表資料をもとに検証したものです。著者のブログで掲載されていたものを加筆して出版したそうですが、対話形式で話は進み、使用されているグラフと表は90近く、人気漫画『ブラックジャックによろしく』も二次使用し、内容をわかりやすく伝えるための工夫がされています。

本書では、アベノミクスの3本の矢-①大胆な金融政策 ②機動的な財政政策 ③民間投資を喚起する成長戦略-がうまくいっていないこと、雇用の回復などアベノミクスの成果といわれるものは鵜呑みにはできないこと、日本経済は危機的な状態にあることなどが、さまざまなデータから明らかにされています。

「民主党政権に比べ経済はよくなり、雇用も回復したというのは事実と異なる」、「GDP(国内総生産)の値には嵩上げ疑惑がある」など、本書で初めて知ったことも多く驚くばかりでしたが、経済問題は得意でないので、著者の主張がすべて正しいのか正直よくわかりません。しかし、安部首相がアベノミクスを掲げてからもう4年が経って、当時の高揚感はもはや感じられず、景気回復の実感はなく、株価上昇といってもほとんど関係なく、「アベノミクスは一体どうなったのだろう」ということは、やはり思わざるを得ません。

著者は、国民がアベノミクスの中身と結果を知らないのは野党にも責任があり、批判するだけでなく、自民党とは違った政策をアピールすべきと言っています。ところが、今野党は党内問題でそれどころではなく、そもそも与党に対抗できるだけの政策立案力があるのかよくわからず、“引くも地獄、進むも地獄”という経済状況はしばらく変わらなそうです。

地獄を脱するためには、私たちも痛みを覚悟することを求められるでしょう。そのためには、まずリーダーが問題を先送りしたり隠したりすることなく、信念と覚悟をもって、きちんと国民に説明することが何より大事だと思います。

読後感(考えさせられた)