えむと、メモランダム

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『生物はなぜ死ぬのか』を読みました。

生物はなぜ死ぬのか (講談社現代新書)

2021年20冊目の読書レポートは『生物はなぜ死ぬのか』(著 小林武彦 /講談社現代新書/初版2021年4月20日)。

“死生観が一変する”という帯コピーが目にとまり、買い求めました。

本書は、生物学者で東京大学教授の著者が、「生き物はなぜ死ぬのか?」という哲学的ともいえる問いに対し、生物学的な視点から答えを導き出すもの。

生物が誕生した理由に始まり、生物が絶滅する意味、生物の様々な死に方、ヒトが死に至るメカニズムを解説したうえで、私たちが死ぬ理由を明らかにしています。

命を授かったからには、死ぬことは当たり前だと思ってきたので、死ぬことの意味など考えたこともありませんでした。

それだけに、「ターンオーバー(生まれ変わり=進化)」が地球の美しさを支え、進化が生き物を作り、地球上の命を支えている。

「死」も進化が作った生物の仕組みであり、形態や生態だけでなく、死に方も生物が多様化する過程で「選択」されてきた。(進化してきた)

老化が死を引き起こすのはヒトの特徴であり、老化もヒトが長い歴史の中で、生きるために獲得してきたもの。(ただし、進化で獲得したヒトの想定年齢は55歳くらい。)

親より子どもの方が多様性に満ちていて、生き残る可能性が高く、子どもが生き残ったほうが、種を維持する戦略として正しい。

つまり、死は生命を維持する原動力であり、そのため、私たちは生まれてきた以上、その命を次の世代へ繋ぐため“利他的に”死ななければならない。

 “生物学的な視点”というだけあって、文系の私にはちょっと難しい話もありましたが、初めて知った「死」の真実に、目を開かれる思いがしました。

死は子孫のためということになると、意味のない人生などありえず、死は人生の一大事業ということにもなりそうです。

もっとも、だからといって、さっさと死ねばいいというわけではありません。

著者は、優秀な子孫が独り立ちできるまでは、しっかり世話をする必要があり、そのためには、親だけでなく、祖父母や社会も関わることが大切。

特に、多様性(=個性)を伸ばすためには、親以外の大人が社会の一員として教育(学校の勉強だけではありません)に関わることが必須だと語っています。

それは、「生物はなぜ死ぬのか」に対する、「生物はなぜ生きるのか」という問いの答えでもあるはずで、私たちが生きて社会に存在する意味を、違った角度から考えさせるものです。

ところで著者によれば、死を怖がる気持ちは、「自分が死んだら周りの人が悲しむだろうな」、「苦労するだろうな」という想像からきていて、この同情心や徳といった人間らしい感情や行動も進化の過程で獲得したとのこと。

自分だけが生き残ればいいという利己的な能力より、集団や全体を考える能力が選択されたのだそうです。

死に対する悲しみや恐れといった人間ならではの感情も、進化と関係しているというのは驚きで、「進化」の奥深さをつくづく思い知りました。